2010年9月12日日曜日

紛争地帯で事故る—アブ・シンベル

砂漠のど真ん中で立ち往生
 「イスラム教徒とキリスト教徒の争い、部族間の争い、警察への抗議が過激化。治安部隊との衝突も発生しています」
 これは外務省海外安全ホームページのエジプト南部に関する危険情報の一節だ。アスワン—アブ・シンベル間は、20〜30台のバスが隊列を組み、警察車両に護衛されながら移動する。わたしはホテルで申し込めるツアーに参加した。
 午前3時、従業員に部屋をノックして起こしてもらい、1階のロビーで待機。少し遅れて4時前になって、トヨタのワゴン車がホテル前に現れ、わたしを拾った。街の外れで他のバスが集まってくるのを半時間ほど待ち、いよいよ出発した。
 走り出してみると、運転手が「飛ばし屋」ぶりが発覚した。どんどんスピードを上げ、隊列を組んでいるはずの前の車をどんどん追い抜いていく。まるでカーレースに参加しているみたいだ。いったん街を抜けると、広がるのは信号も何もない砂漠。「確かに車同士の衝突は考えにくいけれど、どこか不安…」
 そんな予感が的中したのは、空が白み始めた5時ごろ。ガタガタ、ガタガタ。大きな音が車内に響き、眠りの世界から現実世界に一気に引き戻された。ガタガタ、ガタガタ。音は一向に止まない。「ウオー」。車内で自然と上がる、悲鳴にも似た声。
 停車すると、焦げ臭いが車内に充満した。乗客が次々と飛び降りた後、状況が明らかになった。どうやら後輪が大きい石を踏み、タイヤがそれを巻き込んだようだ。運転手はタイヤを交換し始めたが、作業に手こずっている様子。タイヤだけでなく、ホイールも壊れていたらしく、作業は次第に大掛かりになった。
 再出発まで半時間。砂漠のど真ん中、しかも警察が護衛するほど危険地帯で、ポツリとたたずんだ。
 「まあいっか。エジプトには砂漠を巡るツアーもあるし…

0 件のコメント:

コメントを投稿