NHK・Eテレの番組「さかのぼり日本史」は画期的だ。といっても内容が、ではない。歴史を切り取る手法が、である。
これまで歴史を学ぶ方法は、時間の流れに沿って「時代を下る」のが当たり前だった。中学や高校の歴史の授業では、ネアンデルタール人とか石器時代とかから始まり、古代、中世、近世と次第に現在に近付いてくる。
これまで歴史を学ぶ方法は、時間の流れに沿って「時代を下る」のが当たり前だった。中学や高校の歴史の授業では、ネアンデルタール人とか石器時代とかから始まり、古代、中世、近世と次第に現在に近付いてくる。
そういう歴史のたどり方は、社会全体についてだけではなく、個人についても同じことが言える。例えば、結婚式で流される新郎や新婦の生い立ちの映像は、赤ちゃん時代から始まって、成長をなぞりながら二人の出会いをゴールとして描くのがお決まりだ。
でもこの番組は、そのタイトルの通りに時代をさかのぼる。まず最初は戦後の政治を、その次に太平洋戦争、日中戦争、満州事変を取り上げる。そして昭和初期の政党政治が続く、といった流れなのだ。
このやり方の良い点は二つある。ひとつは「なぜそうなったの?」といった疑問や関心を、学ぶ人により強く、強烈に持たせられること。これまで通り、普通に歴史を学ぶと「原因→結果」という順序で出来事を知ることになり、「結果」を知るときには既に「原因」が当たり前の事柄になってしまっているのだ。戦争など起こってしまった事について、「原因を知りたい」という“渇き”を持つ事は、歴史が動くメカニズムにより焦点を当てることになる。
次に、近現代の学習にしっかりと時間を割けることもメリットだ。従来は、原始時代〜江戸時代に大半の時間を費やし、近現代は余った時間でささっとやる傾向があった。ところが、時代をさかのぼる形式だと、近現代が真っ先に扱う時代になるため、十分な時間を割けるようになる。
近現代を振り返るということは、日本がさまざまな犠牲を払いながらも、民主主義を定着させてきたプロセスをおさらいすることでもある。「民主主義が上手く機能しない」という現在の日本が抱える最大の問題の「解」は、この時代にじっくりと真っ正面から向き合うことから生まれる。
歴史の学習が、現代社会の改善に役立つチャンスだ。学校教育の現場でも、歴史を逆流してみたらどうかな?
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