2012年9月20日木曜日

空海が飛び降り?—73番・出釈迦寺

 「近くの崖から空海が飛び降り、釈迦や天女が現れて助けた」というユニークな言い伝えが残っている。飛び降りた崖は見えないけれど、境内にはその方向を示す遥拝所がある。


 73番札所「出釈迦寺(しゅっしゃかじ)」。香川県善通寺市にあり、72番札所「曼荼羅寺」とも近い。


 スズメをあしらった瓦や幕、工芸品が見られる。威厳のある家紋から、ゆるキャラ風まで




 寺近くの民家の塀に、仏の焼き物を見つけた


 なむ

四国のど真ん中—新長谷寺

 「四国の真ん中、とはずいぶん大仰な名前を付けたなあ」。愛媛県四国中央市という自治体名を聞いたときの第一印象だ。でも実際に足を運んでみて思った。「うん、四国のど真ん中だよね」と。

 「ユースホステル新長谷寺」に泊まったのは偶然だった。徳島でなんとなく西に向かって車を走らせていたところ、日が沈んできた。行き先を高知か愛媛か迷っていたため、どちらにも行ける四国中央市で宿を探したのだ。

 お寺が宿泊客を受け入れる「宿坊」という形態。関係者の方々は温かいホスト精神にあふれていて、とても居心地がよかった。

本堂(左)の隣に宿泊施設がある

屋根瓦には葵の紋

 施設の第一の魅力は、なんと言っても眺めの良さ。眼下には高速道路が伸び、遠くに目を移すと高い煙突がモクモクと煙をはいている。きくとこの地域は、大王製紙の企業城下町という。

夜でも煙突はモクモクと煙を吐く

夜が明け、「こんな町だったのか」と知る

 お寺の第二の魅力は、豊かな自然。色んな木々や草花が見られるのだけれど、すべて手が行き届いている。それに境内には立派な石垣もあって「こんな高い所によく運んだものだ」と感心させられる。


 山を下って街に向かうと、「エルモア」「エリエール」の看板が目に飛び込んでくる。さすが「大王製紙の町」。この商品の看板は、町中でいくつも目にした。

町中で見かける「エルモア」や「エリエール」の看板

 にょきにょきっと空に向かって伸びる煙突は、国内屈指の高さを誇るという。工場の横を通ると、酸っぱい臭いがした。

大王製紙の煙突

 四国中央市といえば今月、セブンイレブンが四国進出に合わせてここに拠点を置くことを発表した。行ってみて納得。徳島にも、香川にも、高知にも接しており、四国のどこにでも簡単に足を伸ばせるのだ。

 この後、高知県に寄ったのだけれど、帰り道で四国中央市を再び通ったときに「もう一泊したいなあ」と思った。四国観光の拠点におススメです。

2012年9月17日月曜日

日本のエディンバラ城—丸亀城

 石垣の美しさに、ぐっと見とれた。規模では熊本城に及ばないけれど、平地から天守閣の頂上に向かって石垣が積み重なっている姿はお見事。そのシルエットを眺めながらスコットランドの名城、エディンバラ城を思い出した。

石垣が美しい丸亀城

 雨が降ったり止んだりする中、傘を片手に城を上った。観光案内所の前には、「石垣の名城・丸亀城」という看板が立っていた。「やはり地元の人たちも石垣の美しさを誇りに思っているんだ」と納得する。

モザイク画のような石垣

 そこから100メートルほどの真っすぐな上り坂「見返り坂」を進むのだが、右手側には石垣が高くそびえ、迫ってくる。高さは22メートル。何十、何百という石垣のピースが、緩やかに曲面を作り上げる。

高さ22メートル

 天守閣にたどり着き、ガイドさんが教えてくれた。「美しい石垣はいくつかの条件がうまく重なって生まれた」
①近江(現在の滋賀県)の石垣職人の技。1641~1657年に藩主を務めた山崎家が、石工集団「穴太(あのう)衆」の職人をつれてきた
②豊富な石材。小豆島など瀬戸内海の島は、大阪城などに石垣用の石材を提供した。丸亀城の眼下には島々が浮かんでおり、「石垣の名城」となるのは自然の成り行きだった

西、南側も石垣は立派

 瓦には、約200年間藩主を務めた京極家の家紋「四つ目結」。お遍路をしていると、京極家から支援を受けていた寺の瓦にも、この家紋が見られる。もともとは京極家のルーツ、近江の佐々木家の家紋だったもの。そして時代が下って分家に伴い、変化が加わったデザインも登場する。地理や時間の隔たりにさらされながら、家紋は生き続けてきたのだ。

京極家の家紋「四つ目結」

 絶好の見晴らし。瀬戸内海に架かる瀬戸大橋の先には、観覧車が見える。鷲羽山ハイランドではないか! 「高校生のときに遠足でいったなあ」としばし感慨にふける。

瀬戸内海を一望できる

 城から下りたとき、雨が止み、雲間から陽光が差し込んだ。振り返ると石垣一つ一つが個性を持って輝き、巨大なモザイク画のようだった。

2012年5月11日金曜日

超濃厚に乾杯 ラーメン「はなふく」

 何度目のチャレンジだったろう。これまでは店の前までは行っても、入店を待つ人が多くて、そのまま引き返すのがパターンになっていた。
 きょう淡路島の北部にあるラーメン店「はなふく」に行った。平日で、なおかつお昼時を過ぎた1時半だったので、待つ人は4組ほど。20分で入店できた。
 そもそもこの店を知ったのは「天下一品」がきっかけ。島外に出たときには必ずといっていいほど食べていることを周りに話したところ、はなふくを教えてもらったのだ。
 メニューを見て驚いたのは、ラーメンの種類の多さ。「白しょうゆ」「たまりしょうゆ」「魚介鶏とんこつ」「鶏こく」「鶏とんこつ」の5種類がある(あっさり順)。
 これほど色んな味を区別して提供できる秘訣は、カウンター席から厨房を観察して分かった。しょうゆ系のあっさりスープと鶏とんこつ系のこってりスープを組み合わせて、そのさじ加減で味の違いを生み出していた。
 僕が注文したのは、もちろん「鶏とんこつ」。天下一品ファンとしては、一番こってりしたのを選ぶのは当然だ。待つこと5分。カウンター越しに鉢を受け取った。
はなふくの鶏とんこつ
 顔を近づけてまず感じたのは磯の香り。湯気に乗ってノリの風味がやってきた。それと、ネギは見た目からして新鮮で、実際に噛んでもシャキシャキという音がする。淡路島の海と山の幸がアクセントとして利いている。
 そして肝心のスープ、ひと言でいうと「超濃厚」。かつて新横浜のラーメン博物館で食べた九州のとんこつラーメンを思い出したけど、それと比べると臭みがない。やっぱり天下一品に似ている。違いはというと、天一のスープは飲んだ後、舌に甘み、のどに辛みが残る一方、はなふくのスープは後味がしょっぱい。飲み慣れているのは天一だけど、はなふくのも何度も飲むうちに病みつきになりそう。
 天一との違いは麺にもある。僕が食べたちぢれ麺は、弾力があって歯ごたえが楽しめるし、スープとしっかり絡んでいた。あと、チャーシューは「角煮」といってもいいほどジューシーで、これだけでご飯2杯はいけそうだ。
 結論。一度食べるのをおすすめ。ただし、あまり待たない時間帯を選んでくださいね