焼肉店「天狗家」 |
夕食どきを過ぎた9時半という時間帯にもかかわらず、土曜日だということもあって、店には10組ほどの客が入店を待っていた。相変わらずの人気ぶりだ。昔は、向かいのガストで順番待ちをしたことを思い出した。「飲食店に入るのを飲食店で待つ」という、今考えても奇妙な行動だった。
ライス大 |
ともあれ、目当ての肉をさっと軽く炙り、早速口に運んだ。肉の脂と甘口のタレが口の中で化学反応を繰り返し、脳内に甘美な時が流れる。厚みのある肉は繊維がしっかりしており、噛んでも噛んでも化学反応は止まらなかった。
カルビ2人前 |
次に挙げられるのが、さっぱりした赤身。良いものはナイフがスッと通るほど柔らかく、後味も尾を引かない。年を重ねるごとに、こちらに好みがシフトする人も多い。
これらが焼肉の二大カテゴリーだが、天狗の肉は、どちらにも当てはまらない。位置するのは、第三のカテゴリー「B級グルメ」だ。前のふたつのように「素材のままを楽しむ」ということはせず(できず)、その代わりに揉みダレをはじめとする調味料の力を駆使して、素材の力を何倍にも引き立てる。また値段が張らないため、好きなだけ肉を注文してお腹を満たせるのも、意外とよその店では得られない食体験かもしれない。
そんな店の特徴は、主な客層が20代という客層にもしっかりと表れている。煙に包まれながら勢いよく肉を掻き込む彼らの姿を目にして、一瞬、10年前の自分がそこにいるかのような錯覚にとらわれた。